秩父槍ヶ岳

秩父槍ヶ岳(1341m)

秩父槍ヶ岳登山図

梅雨のため暫く山から遠ざかっていましたが、ようやく晴れ予報となり、久し振りに登って来ました。奥武蔵にはもう未踏の山が殆んど残っていないので奥秩父です。今後はこちらの方が中心になって行くでしょうが、遠いし険しいしであまり気軽に登れません。今回の秩父槍ヶ岳も、中津川へ行った時には嫌でも目に入りますからその存在は知っていましたが、見た目のインパクトから登る事は無いだろうと思っていました。しかし、徐々に興味が湧いて調べると、見た目程の難度は無い事が分かり今回の決行に至りました。


登山口

相原橋の袂にトイレ完備の広い駐車場が在り、橋を渡ると登山口です。この駐車場には屋台みたいな建物も在って、紅葉シーズンには店を開き、多くの人で賑わっていた記憶があります。時期によっては車が止められないかも知れません。橋の向こう側、登山口の正面辺りにも数台分の駐車スペースが在りますので、知っておけばその様な時利用出来ます。

8:00 予報通りとはいかず低い雲が垂れ込め、霧雨の中を歩く事になりました。道路は濡れていませんが、間欠ワイパーを動かす位の雨量です。そのうち晴れるだろうと期待して登り始めました。

野鳥観察小屋

相原沢に沿って登って行きます。途中で沢に降りる所が有りますが、大部分は10m位の高みを行きます。15分で野鳥観察小屋に着きました。手持ちの2010年度版「分県登山ガイド」では、観察小屋から秩父槍ヶ岳へ直登するコースを紹介してますが、現在は通行禁止となっている事が分かっています。念の為立ち寄ってみましたが、やはりロープで塞がれていました。

仮に通行止となっていなくとも、今回はこの道を行くつもりは有りませんでした。下調べで相当な難路である事が分かっていましたから。その為に現在は通行止となっているのでしょうしね。加えてこの天候です。濡れた岩稜の急登なんて考えただけで恐ろしい。

急斜面の登り

出発から約30分、沢から離れ急斜面の登りに変わりました。右に見えるのは標高点880mの在る岩尾根です。この尾根に乗るのかと思いきや、そうではなく隣の尾根状との間を折り返しながらの登りでした。その後も稜線には出ず、暫く中腹を登って行きます。

崩落地

8:49 崩落地で道が切れていました。迂回路が崩落地の上部に造られ、今は全く問題無く通過出来ます。誘導標識の傷み具合を見ると、もう数年は経っていそうです。

階段

「野鳥の森歩道」と銘打つだけあって、階段の設けられた所も有りました。しかしこれ、登山者にとっては余計なお世話なんですよね。特に下りでは大股を強いられて負担が掛かります。階段が終わるとルートの分かり難いゴーロ地帯に突入しますから、そこに杭でも打って視認し易くして貰った方が有り難いです。

標高1140m付近

9:26 標高1140m付近で稜線に出ました。ここまで急登の連続でしたが、ここで一旦緩みます。一息吐くならここが良いでしょう。900m位から雲に突入しているので景色は見えませんが、晴れていたらもしかすると眺望が得られるかも知れません。

梯子

1200m〜1250mの間は地形図で見ても等高線が詰まっています。ここが登り最大の山場でしょう。とは言え、ご覧の様に梯子が設置してありますし、間を置かず現れる次の難所でもロープが下がっています。通過そのものにはそれ程時間を取られません。

巨樹

霧の中を登って行くと存在感の有る巨樹が見えて来ました。樹種は分かりません。ブナ科で巨樹が多いのはミズナラですから、これもそうでしょうか。

巻き道分岐

10:09 標高1390m辺りで巻き道が分岐しますが、野鳥の森歩道はここで折り返し気味に左折するので、むしろ巻き道が主道の様に見えます。秩父槍ヶ岳へ向かうにはこの巻き道を行くのが近道ですが、途中に踏み跡が薄くなる所が有るので注意が必要です。自信が無かったら歩道終点から稜線伝いに行った方が分かり易いです。余計なピーク越えが1つ増えますけど。

秩父槍ヶ岳

10:22 鞍部で主稜線に乗ると一登りで秩父槍ヶ岳です。ただし、前述の登山ガイドではここでなく、もう少し先の標高点1341mを秩父槍ヶ岳としています。更に、私の持っている2011年版「山と高原地図(エアリアマップ)」では「テレビ受信アンテナあり」との書き込みが有るので、その中間に在る小ピークを秩父槍ヶ岳としている様です。ここの山名板にコンサイスと括弧書きが有るのは、「コンサイス日本山名辞典」による所在らしいです。

尾根を外れて下る道

10:39 急激に下った後、一旦平坦部に出ると道が尾根を外れて下って行きます。指導標に中津川・槍ヶ岳と書かれているのは、「分県登山ガイド」の槍ヶ岳を指しています。このまま直進すると、20〜30m先がアンテナの立つ「山と高原地図」の槍ヶ岳です。

アンテナ

アンテナの所へ寄ってみました。殆んど登らないのでピークという気がしません。この先は突き当たりになっており、急峻な岩尾根のため通り抜け出来ません。

実は、コンサイス槍からの下りで濡れた根に滑り、転んでしまいました。急な下りだったので数m滑落し、体中あちこち擦り傷だらけです。何と言っても精神的ダメージが大きく、ここで大休止する事にしました。

某所で見付けた戦前の地形図では、コンサイス槍の所に1442mの標高が記入されています。一方、他2箇所は岩記号となっており、ピークは在りません。この図を元に考えるなら、コンサイス槍が正式な秩父槍ヶ岳かも知れません。山名板に1430mと書かれていたのは、等高線による判断から1430m以上1440m未満という意味なので、1439mでも同じになります。あの様に尖った山頂ですから、長い年月の内に数m風化しても不思議ではありません。

中津川分岐

20分ほどで出発しました。中津川に向かって下るアンテナケーブルを追いかける様に、急な道を下って行きます。また足を滑らせやしないかとヒヤヒヤものです。不安を覚える程の長い下りですが、分県ガイドの槍はコンサイス槍より90mも低いですから、間違いではありません。

7〜8分で中津川への道を分けます。

細尾根の突端

細尾根の突端に出てしまいました。おかしい。踏み跡も全く感じられません。ギリギリまで行ってみましたが、それ以上は急過ぎて無理です。霧の中でぼんやり見える辺りの地形に目を凝らしていると、突然足元の小岩が崩れました。咄嗟に近くの木へしがみ付き、何とか転落は免れましたが、リュックのサイドポケットに入れていた飲料水が落ちて谷底へ消えていきました。飲みかけのと未開封の物を両サイドに入れてましたが、どちらともです。

尾根を乗っ越す踏み跡

幸いこの天候ですから、それ程喉が渇く事はありません。リュックの中に入れていたお茶が1本残っているので、少しずつ飲めば何とか保ちそうです。しかし、この事により、また擦り傷を増やしてしまいました。

見落としの無い様慎重に戻ると、尾根を乗っ越す踏み跡が在りました。これが正解です。私が誘い込まれた方と踏み跡が二分しているので、多くの人がそちらに寄っているのでしょう。晴れていたら恐らく眺望が得られるのだと思います。

秩父槍ヶ岳

11:25 急下りの後、登り返すと標高点1341mの秩父槍ヶ岳でした。すんなり着いていればアンテナピークから15分程度だと思います。中双里辺りで呼ばれていると言うタカトンガリは多分ここの事でしょう。下から見ると一際目を引く鋭鋒です。

それとは別に、仏石山と言う名も仏石山鐘乳洞や仏石山トンネルに名を残しています。風土記稿に佛石山の記載が見られますが、残念ながら現在の地図にその名は見られません。その為明確にどこを指すのか分からないのですが、昔は今の様に山頂に対する拘りは無かったですから、ここを含むギザギザの岩連峰を大きな括りでその様に呼んでいたのでしょう。

東へ下る道

東へ下る道が有りました。これが多分野鳥観察小屋に通じている道でしょう。こちら側もロープで塞がれています。分県登山ガイドではこの道を下りでは使わぬよう注意していますから、よほどの難所が存在するのだと思います。

眺望の無い狭い山頂なので、この後アンテナピークへ戻って昼食休憩にしました。

野鳥の森歩道終点

11:50 アンテナピークに到着。13:06 出発。午後になると段々雲が薄くなり、日が差し始めました。

13:30 コンサイス槍を越え、野鳥の森歩道終点までやって来ました。以前はここに終点を示す標柱が在ったみたいですが、今は壊れて無くなってます。膝丈位の指導標と木に巻かれた赤テープだけが目印ですから、見落とさない様にしなければなりません。

注意書き

ところで、秩父槍ヶ岳の南東に、高ドアという変わった名の山が存在します。1198.4mの三角点峰がそれです。実は、今回の登山目的の半分はそこに行きたい思いからでした。ネットで検索しても、登山記録は1件たりともヒットしない謎の山です。凄くそそられます。

高ドアに向かうため分岐をそのまま直進して南下しました。少し踏み込むと写真の様な注意書きが2箇所に貼られています。

平坦な尾根道

p1461までは南西方向に尾根が続いています。時々露岩が現れるけど、特に歩き難くはありません。ここで本日3度目の転倒をしてしまいました。濡れた露岩の下りで足を滑らせたのです。1日に3回も転んだのは初めての事です。尻餅を搗いた程度で大きなダメージは有りませんが、カメラの液晶に蜘蛛の巣状のヒビが入ってしまいました。こっちの方が痛いです。

巨木

p1461からはほぼ真南に進路が変わります。最初の下りだけ急ですが、そこさえ過ぎれば別世界の様な平坦路に変わります。奥秩父に居る事を忘れてしまいそうです。

途中に巨木が有りました。枝振りからするとツガの様ですが、こんなに太いのは滅多に見られません。赤城神社元宮跡で見た以来じゃないですかね。

1520m峰

唐突に1520m峰が立ち塞がりました。長く続いた平和な尾根道からなので、ギャップが大きくて溜息が出ます。急斜面の為直ぐに消えてしまうのか、はっきりしていた踏み跡も見当たらなくなりました。

高ドアに続く尾根

14:32 1520m峰に到着。写真は高ドアに続く尾根の方向です。地形図を見ると等高線の開いたゆる尾根なので、道が在るんじゃないかと期待したんですがダメでした。これではどれ程時間が掛かるか分かりません。諦めて戻る事にしました。尚、逆方向はシャクナゲ尾根で、踏み跡が続いていました。白泰山避難小屋の二里観音裏に出ます。

芋掘ドッケン

ピーク近くから芋掘ドッケンが見えたので撮った写真です。帰宅後地形図に照らし合わせたら、手前に見えているのはp1297じゃないですか。南面が伐採地になっているという事は道が有る筈です。グーグルマップで衛星写真を見たら、p1441から高ドア手前のピークまで広大な伐採地になっていました。約400m我慢して藪漕ぎをすれば伐採地に出ていた筈です。残念な事をしました。

秩父槍ヶ岳

野鳥の森歩道終点着が15:30、相原橋着は17:00丁度でした。

別の日に撮った中双里橋からの秩父槍ヶ岳です。カーソルを写真に乗せてみて下さい。1番左がコンサイス槍(カシバードで確認)です。1341m槍ヶ岳は手前になるので、遠近法により1番高く見えます。混迷する秩父槍ヶ岳ですが、こうして見比べると個人的意見では分県登山ガイドに軍配が上がります。

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