権現岳

編笠山(2523.7m)/権現岳(2715m)/三ツ頭(2580m)

権現岳登山図

2011年10月上旬、八ヶ岳の一峰、権現岳に登りました。初の八ヶ岳は何としても好天の日が良いと思い、ずっと好機を窺っていたんですが、とうとうこの日の山天気予報が1日中晴れマークになり、やっと登れる事になりました。しかし、先送りしている間にどんどん季節が移り、ただでさえ1ヶ月は早い山の気候がこの所の寒気の南下で更に進み、関東平野に置き換えたら真冬並の気温の中での登山となってしまいました。


登山口

6:30 観音平駐車場より出発です。自宅から小淵沢I.Cまで約2時間、思ったよりずっと早く着いたので、I.C近くのコンビニで買い物ついでに仮眠してました。小淵沢I.Cからここまでは10分位でしょうか。奥多摩や奥秩父の山と比べても、場所によっては時間的逆転があるほどアクセスの良い所です。

駐車場奥に登山口が在ります。今回はまず編笠山を目指し、権現岳、三ツ頭と巡ってここに戻る右回りにしました。逆回りなら三味線滝を指す方に行きますが、より短時間で眺望の良い山頂に着く右回りの方が精神的に楽です。参考に八ヶ岳ガイトマップをどうぞ。

車の外気温表示は2℃でした。山頂近くでは間違いなく氷点下です。先の天気予報で分かっていた事ですから冬支度で来ましたが、急激な変化に体が付いて行かず寒さで硬直してしまいます。なにしろ半月前の飛龍山では半袖だったんですから。

登り始め

登り始めは笹原の緩斜面を行きます。遊歩道が交錯していたりして少し戸惑う所も在りますが、基本「道なり真っ直ぐ」です。徐々に傾斜を増すと、表土が流出して木の根や石の露出した歩き難い道になっていきます。こういう道は人気コース共通のもので、どこの山でもそうですから避けられないですね。

雲海

7:14 雲海で富士見平からの道が左後方から合流して来ます。ここにはベンチが1脚有り、富士山の方向が切り開かれた展望所の様になっています。

涸れ沢みたいな道

雲海を過ぎると針葉樹が目立ってきます。道の掘られ具合も益々酷く、まるで涸れ沢を登っている気分です。右手には復路で下るアトノ尾根が木の隙間に見え、木戸口らしき小ピークも確認できます。

押手川

7:52 押手川は本当の川らしいです。雪融けの時期だけ川となって流れ落ちるとか。道の削られ方が酷いのもそのせいかも知れません。

ここで山頂に向かう道と編笠山を巻いて青年小屋へ向かう道に分かれます。

梯子

押手川から先は急激に傾斜を増し、厳しい登りになって行きます。途中この様な梯子が有りました。

編笠山山頂

9:07 編笠山山頂に着きました。山頂付近はハイマツばかりなので360度遮る物が有りません。あまりの景色に息を呑みました。この景色を見ずに巻き道を行くなんてバカげてます。時間的に厳しかろうと、少々無理してでも登るべきです。

パノラマ1
パノラマ2

上段…眼前の南アルプスから中央アルプス、北アルプスまで良く見えます。白さが目立つのは白馬辺りでしょうか。諏訪湖や蓼科山も見えます。下段…左から阿弥陀岳、赤岳、ギボシ、権現岳です。手前の木に没する所が三ツ頭。


青年小屋

9:24 権現岳に向けて出発。北斜面は霜柱が多く、寒さを実感します。道の中央は硬いので両端だけですが。

半分位下りると残りは大きな岩がゴロゴロした所になります。岩から岩に飛び移る感じで疲れるし、直線的に歩けないので時間が掛かります。

乙女平

9:44 ようやく青年小屋前に到着。右から巻き道を合わせます。右端に写る建物はトイレ(有料 \100)です。この平坦地は乙女平といい、西岳の方へ少し行くと乙女の水という水場が在ります。

のろし場

10:16 再び登りにかかり、小ピークに登り詰めると、そこがのろし場です。標高2530mとなっているので編笠山より僅かに高いですね。この奥は崖になっていて覗き込むのも恐ろしいです。

西ギボシ

のろし場から見上げるギボシは鋭く突き上げ、剥き出しの岩壁が恐ろしげに聳えていますが、実際に登るのはこの切り立った岩壁ではなく縁を回る様に横を通り抜けて行きます。とは言え、この登りがコース中で最大のヤマ場である事に違いありません。しかも、実はこれ前衛峰とでも言うべき西ギボシです。苦労して登り上げると再び似たような東ギボシが聳え立ち、それを知らずに登ると愕然としてしまいます。

西ギボシの登り

西ギボシの登りにて。急な登りですが高度感は無く、怖いと感じる事は有りませんでした。

岩場

途中この様な岩登りも有りました。ペイントマーク通りに進むとすんなり登れます。鎖も有るのでそれ程苦労しません。

見下ろすのろし場

ピークまであと一息という所ですが、小さな平坦地が在ったので休憩しました。見下ろすのろし場はあっと言う間に小さくなって見えます。

東ギボシと権現岳

西ギボシに立つと権現岳は目の前という感じです。しかし、手前には見た様な鋭鋒が。「あれっ?今越えた筈じゃ…」と、状況を呑み込むのに一拍掛かりました。こちらが本物のギボシ(東ギボシ)です。

またこれを越えるのかと、少々うんざり気味ですが、今度はある程度登った所から中腹を巻いていました。登るにしてもこちら側からは無理で、一旦巻いてから折り返す事になります。

権現小屋

11:00 権現小屋です。この建物の裏に青年小屋と同じタイプの有料トイレが在ります。山頂は奇岩の突き出ている所です。

パノラマ3

小屋を通り過ぎて少し登り返すと、2〜3分で縦走路です。左はキレットを経て赤岳、右が権現岳山頂です。甲武信や金峰が正面に見えますが、湧き始めた雲で山頂部は隠れていました。


権現岳山頂

11:08 山頂には鉾が奉納されていました。高千穂峰の「天の逆鉾」は有名ですが、他ではちょっと見たことが有りません。さすが八ヶ岳信仰中心の山です。

下には「神社」の部分しかない石版と「金毘羅大権現」が祀られています。権現岳の「権現」とは金毘羅権現の事なんでしょうか。

権現社

南側の権現社前に移動して昼食休憩にしました。最高の眺めですが、冷たい風が吹き付けます。しかし、山頂周りに風除けになる所は無いので仕方ありません。

権現岳は2715mで近年登った山では最高峰ですが、過去を振り返れば就職した翌年に専門学校時代の友人に誘われ、北アルプスの表銀座と呼ばれるコースを歩いた事が有ります。燕岳から槍ヶ岳への縦走です。計画では更に奥穂高まで足を伸ばすつもりでしたが、台風が接近して来たので槍沢経由で上高地に下りてしまいました。ですから、生涯最高到達標高は槍ヶ岳の3180mです。

北アルプス

この写真は編笠山から(権現岳からはギボシが邪魔になる)ですが、懐かしい北アルプスの山々にも対面しました。もう雪で薄っすら白くなっています。槍ヶ岳左の大きな窪みが大キレットで、そこから北穂高、涸沢岳、奥穂高と続いています。右端の一際白い山は立山辺りでしょう。


下山経路

12:06 下山を開始します。スケールの大きさと澄んだ空気の為遠近感が狂い、近くに感じてしまいましたが、とんでもない勘違いです。すぐそこに思える三ツ頭でさえ40分掛かりました。

三ツ頭

12:46 三ツ頭に到着。振り返ると壮観な眺めです。この時までは「次は赤岳(1番右)かな」と思っていたんですが、これを見て戦意喪失中です。清里からのルートを考えていて、その場合右の稜線がまんま登山ルートになるんです。

甲斐小泉ルート分岐

三ツ頭から3分でこの分岐が在ります。直進すると天女山、右折が下山コースの甲斐小泉ルートです。

甲斐小泉ルートに乗ってから暫くは稜線から少し離れた所を歩くんですが、風の来ないその区間は非常に暑かったです。マジにTシャツ1枚で行けそうでした。ところが、ひとたび稜線に出ると風が冷たく、一気に体が冷やされます。夏と冬を同時に味わった気分です。

木戸口

13:39 木戸口は尾根上の小ピークで、アトノ尾根では唯一の登り返しになっています。ガイドマップでは木戸口公園になってますが何故でしょうか。確かに写真の大きな標識には八ヶ岳中信高原国定公園と入ってますが、それは八ヶ岳全域を指す筈ですから、それをもってここを公園とするのはおかしな話です。この場を示す部分には「木戸口」とだけ書かれています。

ヘリポート

木戸口から10分ばかり下った所で突然大きく視界が開けました。気になって調べてみたら、ここはヘリポートらしいです。頭に入れておくと、万一の時にはここまで来れば何とかなります。

笹原の道

こんな笹原を行く区間が多くなります。元々往路に比べたら細い道でしたが、笹原では道が埋没しそうな頼りない所も現れ、一気にマイナールートの様相を呈します。

この先で「笹すべり」や「早乙女展望台」といった場所を通るのですが、標識が朽ちていたのか見落としたのか、気付かぬまま通り過ぎていました。

延命水分岐

14:47 ベンチの置かれた休憩所に着きました。道が分岐しており、一方は「延命水」となっていますが、下に「けもののヌタ場と化しており飲用不適」と注意書きがぶら下がっていました。

富士見平から200mほど観音平方向へ行くと、同じく延命水という名の水場が在ります。武田信玄が飲んだとされるのはそちらの様です。

八ヶ岳横断歩道

14:58 整備された広い道が交差しています。八ヶ岳横断歩道です。ここを右に行くと観音平に戻れます。因みに左へ行くと三味線滝を経て天女山、直進すると甲斐小泉駅です。

長い階段

古杣川に向かって長い階段を下りて行きます。地形図を見ると70〜80m下り、また同じ位登って観音平に戻っています。古杣川には水が有りませんでした。ここも雪融け時期限定の川かも知れません。

観音平

15:23 観音平に着きました。最後は古杣川からの登りになりますが、長い下りに比べると登りは楽だと実感しました。

観音平駐車場

駐車場から巡った山々を見上げます。

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