白泰山

白泰山(1793.9m)

白泰山登山図

2011年5月上旬、白泰山に登って来ました。どちらかと言えばマイナールートを登りたい方なので、始めに考えたルートは中津川からタツマノ尾根、シャクナゲ尾根と辿るコースでしたが、どうも余り面白くないルートらしいのでメインルートの栃本尾根に変更しました。結果的にはこれが大正解でした。白泰山自体がマイナーな山なので静かな登山が楽しめましたし、登山道も凄く良い雰囲気で大変気に入りました。


栃本関跡

秩父の西に向かうかつての往還道はこの栃本関で二手に分かれ、一方は雁坂峠を越え甲斐へ、もう一方は十文字峠を越え信濃へ通じていました。今回登った道はその十文字峠越えの往還道そのものです。それを知った為にこちらへ変更した様なものです。米の採れない秩父に信濃から物資を運んだ重要な道であり、また、信濃の善光寺と秩父の札所参り或いは三峰山に参拝するため、互いに行き交う道であったので古くから発達した道だった様です。

地形図には関所跡から集落を抜ける道路の終わり、両面神社辺りから始まる点線が有りますね。それが往還道です。道中には一里毎に観音像が据えられ、長野県毛木平近くの五里観音まで続きます。その内歩いたのは二里観音までの区間ですが、一里観音から先は充分にその雰囲気が感じられました。

栃本広場の駐車場

出発は栃本広場の駐車場からです。往還道を味わうなら関所跡からでしょうが、あちらは車も止められない谷間ですから仕方ありません。おかげ(?)で200m以上も高度を稼ぎ、楽が出来ました。

6時少し前に到着すると車は他に無く、広い駐車場は貸し切り状態でした。時間が早い事ばかりが理由ではない気がします。山から戻っても他に1台しか無く、その車もここを管理する人の物でしたから。

6:16 出発。奥に見える建物はトイレです。

奇妙なオブジェ

道がよく分からなかったので取り敢えず林道を行きましたが、駐車場すぐ上の山ノ神峠からが1番早かった様です。そこから稜線上に道が伸びています。案内板によれば更に北斜面にも道が1本通っており、これらで栃本尾根ハイキングコースなるものを形成しています。

10分ほど林道を行くと奇妙なオブジェが有り、その先で稜線に移る道が分岐していました。ここには身障者用の駐車場とトイレが有ります。

ここで稜線に移るも良し、このまま林道を行きもっと先の往還道を登るも良しなんですが、舗装路は疲れるので稜線に移る事にしました。

檜と笹の中

檜と笹の中を登って行きます。直登する感じで以外にしんどい。

稜線の道

7〜8分で稜線の道に合流します。ここからは楽になるかと思いきや、アップダウンが思ったより多くやはり息が切れます。木杭の階段が多く、リズムが狂うのも原因でしょう。

長い階段を登り終えると十二天に続く平坦路に変わるのですが、十二天はいつの間にか通り過ぎてしまいました。気付かなかったという事は山名表示も無かったんだと思います。

右に両神山、左に見え隠れする和名倉山を眺めながら進みます。ハイキングコースだけあって快適な道です。北斜面は自然林ですから、そちらの道も良さそうですね。

下る階段

平坦路が終わると登った分は下るという感じでまた階段です。前方には更に50m高いピークが待ち構えてるというのに。

写真にも写ってますが、ピンクのリボンが目立ちました。いや、あの…ここハイキングコースだし。こんな道で迷う人いないし…と、取り敢えずツッコミを入れておきます。付けた人の気が知れません。

自然林と唐松林

登り返しは自然林と唐松林の中です。雰囲気が一転し里山を抜けた感じがして気分が盛り上がって来ました。

スズタケの中を行く道

ハイキングコース終点が近付くとスズタケが目立ち始めます。広かった道が一気に狭まりますから、こういう道に慣れていない人は進んで良いもんか迷うんじゃないでしょうか。こんな場所こそリボンの目印などが生きてくると思うんですが、無いですねぇ。

ハイキングコース終点

7:23 ハイキングコース終点です。右から北斜面の道が合流して来て、左のすぐ先で旧往還道の十文字道に突き当たります。この時はそれを理解しておらず直進する踏み跡に入ってしまいましたが、数十mの藪漕ぎで無事十文字道に合流しました。

一里観音

7:34 合流してから一里観音までは割と近いです。ここで道が左に分岐していますが、指導標が古く文字が見えないのでどこへ向かうのか分かりませんでした。読めた頃の登山記によると「水場2分」と書いてあった様です。今はその水場も涸れている事が多いらしいので、余り当てにしない方が良いでしょう。

往還道

更に進むと辺りはモミ・ツガ等の常緑樹に包まれ、適度に混じったブナ・ダケカンバ等が明るさを生み出しています。かつての主要道ですから道幅は広く、急な登りも有りません。今は鶯が盛りらしく、方々で競うように鳴いていました。春の山を実感します。凄く良いです。

秩父や奥多摩の山は元々こうだったと思うんです。今でもバリエーションルートを行くと採り残されたモミやツガの大木が見られますから、昔は全山にこうした木が生えていたんでしょう。そう考えると、この辺りは往還道当時の姿を残していると思えます。どうです?ちょんまげ結った人々の行き交う姿が見えるようじゃありませんか?

白泰山

白泰山が見えて来ました。この辺りは東大演習林であるらしく、時々東京大学の文字が入った山火事注意の看板が目に付きます。南側の入川には昔、東京大学演習林軌道が通っていて、1969年まで稼動していたそうです。廃線となって40年以上経った今でもレールなどが見られるとか。

山頂への道

8:41 白泰山の北を巻き始め、暫く行った所で山頂への道が分岐していました。いや、指導標は有るものの、道と呼べる代物ではないので踏み跡ですね。歩き易そうな所を何筋か踏み跡が続いていました。比高約100mを直登するので結構大変です。

白泰山山頂

8:54 山頂に着きました。眺望無しの狭い山頂です。この山を目指して登る人は少ないだろうし、十文字小屋泊の人は巻いてしまうでしょうから致し方無しか。

それはそうと、山名標識が凄い事になっていました。これって、まさかクマ !?

西尾根の踏み跡

下りは西尾根の踏み跡を辿りました。殆んどの人が同じ事を考える様で、登りの踏み跡と変わらない濃い踏み跡です。元の道に合流するまで結構長く、合流後は僅かな距離で避難小屋でした。

因みに、地形図だと東の尾根にも点線が付いてますが、そちらに道や踏み跡は有りません。

白泰山避難小屋

9:16 これが白泰山避難小屋です。表はログハウス風で中はブロックの壁。往還道当時は茶店が在った所らしいです。

右に登る道が始めに考えたシャクナゲ尾根から中津川へ至る道です。その入口に二里観音が在ります。通行禁止になっていましたが、ネットで検索すると結構ヒットするので全く通れない訳ではなさそうです。

避難小屋内部

避難小屋内部です。入口近くに置かれた薪ストーブがまず目に付きます。最近では火事防止の為どこも撤去しているので珍しいです。

ドアと窓が2つずつ有りますが、全て鉄製で観音開きの窓にはガラスが有りません。全部閉めると中は真っ暗です。

のぞき岩

小屋の南に在るのぞき岩からの景色は素晴らしいです。山頂の眺望が無いだけに絶対に外せない場所ですね。

栃本広場から丁度3時間、思ったより早く着いたので赤沢山まで足を伸ばそうか考えました。見た目では1時間位で着きそうです。しかし、ハードな登山が2週続いたので今回はここでのんびりする事に。それでも往復15km位だったので充分です。

食事も含め2時間近くをここで過ごし、11:03 下山開始。

のぞき岩からの眺望

のぞき岩からの眺めです。奥秩父主脈が目の前にドーンと広がります。中央の特徴的な台形は破風山。左が雁坂嶺、右が木賊山・甲武信ヶ岳・三宝山と続く中核部です。近くの二子山みたいなのが赤沢山ですね。


ミツバツツジ

往きは全て蕾みだったミツバツツジがほころび始めてました。この日の関東平野は夏日の予報でしたが、この辺でも結構上がっていたと思います。

ハイキングコース分岐

12:14 ここでハイキングコースが左に分岐します。帰りは直進して往還道を下ってみました。

稜線の道が近い

4〜5分歩いた所で稜線に近付きました。往きには全く気付かずに通過しています。念のため駆け上がってみましたが、やはり往路で使った道でした。両神山に気を取られて南を見ていなかったのでしょう。

林道

12:44 林道に出ました。この道が栃本広場に続く道です。途中で10分休憩を入れているので、実際には分岐から約20分です。左上に見える道標から更に道は続きますが、この辺りはもう植林地なので行っても面白くなさそうです。最後になって200mも登り返すのは嫌なので林道で戻りました。

林道の方も決して楽しい道ではありませんが、中間辺りにヘリポートが在り、眼前に臨む和名倉山に一瞬テンションが上がりました。それ以外は退屈な植林地です。駐車場に着いたのは13:18でした。

大峰山

時間が余ったので大峰山(1062.1m)へ行ってみました。山ノ神峠から大峰山までの間が栃本広場で、栃本峠を中心に8の字を描く様な散策路が造られています。大峰山も含め眺めの良い場所は在りませんでしたが、山ノ神峠〜栃本峠間はモミやツガの大木が残されていて、なかなか良い道でした。

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