2011年9月中旬、奥秩父主脈の中で残された山域、雲取山西の山へいよいよ踏み込む事にしました。まずは、名前のインパクトから色々想像を掻き立てられる飛龍山です。山頂を埼玉県と山梨県が接する山で、近くに飛龍権現が祀られているため付いた名ですが、秩父側では大洞川源流の山なので大洞山(おおぼらやま)と呼びます。埼玉県人としては大洞山と呼びたい所ですが、飛龍山のカッコ良さには敵いません。
尚、ヤマナビ2のバッテリーを交換した際、手違いから前半部が上書きされてしまいました。なので出発点から前飛龍辺りまでの軌跡が有りません。
計画していたルートは後山林道終点まで車で乗り込み、三条の湯〜北天ノタル〜飛龍山〜前飛龍〜熊倉山〜サヲウラ峠〜林道終点という周遊コースでした。林道終点の駐車スペースは数台分という事なので、深夜に車を走らせて駐車場を確保し、車中で仮眠を取って出発するつもりでした。ところが、いざ行ってみると林道入口がバリケードで塞がれ、全面通行止だったのです。
さて困りました。今更中止にはしたくないですし、かと言って他の山にするには準備が足りません。ヤマナビ2が有るので何とかなるかも知れませんが、機械ですから故障の可能性だってあります。やはり地図が無いと不安です。色々思案した結果、別ルートで登る事にしました。
6:35 道の駅たばやまで2時間ほど仮眠し、ここから出発です。準備してる間に朝もやがみるみる晴れて来ました。
411号線を暫く歩きます。村役場の在る所ですから、丹波山村の中心地でしょう。レトロな家が建ち並ぶ中、この家は別格でした。洋風の家もそうですが、何と言っても隣の門構えです。戦前の匂いさえ感じられます。
ガソリンスタンドの手前、一軒挟んだ所にサヲウラ峠登山口の指導標が有りました。小さすぎて見落としそうです。この辺に在る筈だと思いながら歩かないと見付けられないんじゃないですかね。
6:44 ここを入ると畑作業用の簡易舗装路です。この先は登山口まで1つも標識が無く、実はこの後間違えた道を行ってしまいました。
畑の中をクネクネと進み、初めての橋を渡るとすぐに道が途切れ、突き当たりになっています。歩行者用に脇道が奥へ続いていたのでそちらへ進みました。
6:58 途切れた道が再び始まりますが、鹿避けフェンスで行く手を塞がれてしまい、近寄って見てもロックが無くなっていたのでこの時は扉だと思わず、つい引き返してしまいました。帰宅後に気になって調べてみると、以前の写真にはフック式のロックが付いており、ここを通り抜けて行くのが正しい道順だったんです。急遽変更したルートだったんでよく分かってないのは仕方ないですね。むしろ登山者にもっと親切な表示が欲しいと感じました。
さて、橋まで戻ると両脇に階段が有ります。この時点で本当は道を間違えていた訳ですが、これより下にはそれらしい分岐は無かったですから、このどちらかが正解に違いないと思い上ってみました。まず手前の赤い鉄階段です。上は放棄された畑らしき草地で1歩も進めませんでした。続いて反対側のコンクリート階段です。入口から草がはびこり、暫く人の通った様子がありません。しかし、上り切った所は鹿避けフェンスのドアが有り、奥に進めます。
消えかかった道を辿り、植林地を抜けると真新しい大きな砂防堰堤に着きましたが、道はここで完全に途切れてしまいました。取り敢えず高みに登らなければ周りの様子も分からないですから、登り易そうな右岸に移り草の斜面を這い上がりました。
こちらには道路が通っていました。恐らく堰堤工事のために新しく造られたのでしょう。路面の傷んだ様子も無い新しい道です。この道が出来た為に順路が変わったんだと勝手な解釈をし、道路を登る事にしました。
今思えばこの時左に下っていたら10分程度のロスで済んでいたんですが、登山に来て下るなんて発想は出来ません。100人中100人が登りを選ぶ事と思います。
この道路は100m位で終わってました。堰堤上流の土砂溜まりで終点です。しかし、その手前に階段で分かれる細い道が在りました。
それらしい山道が続いています。ログデータが消えてしまったのでどれ程登ったのか分かりませんが、結構奥まで進みました。一息入れて現在地をヤマナビ2で確認すると、登山道と全く違う所を歩いていてびっくり。すぐに引き返しました。どこかに分岐が無いか確認しながら下りましたが、それらしい所が無いまま舗装路まで戻ってしまいました。そうしている内に車が登ってきたのでドライバーに道を尋ね、ようやく登山口の在り処が分かりました。
7:42 ここが登山口です。何の事はない、最初の鹿避けフェンスを抜けていたら僅かな距離でした。迷わなければ7時頃には着いていたでしょうから、40分以上のロスです。時間的には何とかなりますが、体力の消耗はバカになりません。
この先でもあと2つフェンスを通り抜けます。
8:05 尾根上に着きました。指導標柱に「山王沢」と書いてあります。すぐ北側の沢でしょうか。
ここからいよいよ本格的に急斜面の登りです。道の駅から既に300m近く登っていますが、サヲウラ峠までは更に500m以上の登りです。
この区間、登りも確かに大変ですが、特に大変なのは帰りの下りです。長々と続く急下りは、その間ずっと空気椅子状態ですから太腿が痙攣しそうになりました。
9:20 サヲウラ峠に到着しました。漢字で書くと竿裏峠。オではなくヲを使うところが面白いです。ウを略してサオラ峠とも。
ここは尾根通しの道と乗越す道の十字路になっています。ベンチは有りませんが、代わりに丸太が2、3転がっています。苦しい登りだったのでここまでも散々休憩しましたが、落ち着いて休める所は無かったので革めて10分休憩。
サヲウラ峠〜熊倉山間は、ブナ中心の自然林で心地良い道です。所々に巨木も在り、緩やかな登りなので思う存分森林浴を満喫出来ます。ここだけでも苦しい思いをして登った甲斐がありました。
10:10 緩やかな登りから一転して短い急坂を登ると、三角点がポツンと埋まってました。熊倉山です。山名板にカッコ書きで火打岩とありました。
熊倉山を過ぎるとスズタケが目立ち始めました。林相も樺や黒木が多くなり、奥秩父らしくなります。ここでもスズタケは殆んど枯死しており、歩行の邪魔にはなりません。
前飛龍の急な登りを行くと最後は岩場になり、突然視界が開けました。本日初の好展望に思わず写真を撮りまくってしまいましたが、少し我慢して登り切った方が足場が安定します。上段…雲取山から続く石尾根。防火帯がはっきり視認出来る距離です。右端には御岳山も。中段…木の左に奥多摩三山が並びます。下段…右に大菩薩連嶺が近いです。小金沢山の上には富士山が頭を出しています。
11:30 岩山のピークに登り着きました。パノラマ写真を撮った所からほんの僅かな距離です。指導標柱に前飛龍と書かれているので、この時はここが前飛龍かと思いましたが、改めて地図を見ると次のピークが前飛龍です。勘違いしていたので前飛龍の写真は有りません。
ここから岩岳へ下るルートは針金で塞がれていました。
ここからだと先程より更に北西方向の視界が広がります。北奥千丈岳と国師ヶ岳が見えますが、その右に在る筈の甲武信ヶ岳は雲の中でした。笠取山や唐松尾山も見えていたと思うんですが、まだ山座同定出来ません。11:40まで休憩して出発。
前飛龍からはアップダウンを繰り返しつつこの笹原の鞍部まで下ります。ここまで石楠花が多かったので花の時期は綺麗かもしれません。
12:26 飛龍権現神社です。思っていたのと違い、小さな石祠でした。奥秩父主脈縦走路は、山頂を通らずここを通っています。
久し振りのハードな登山に体が全く着いて行きません。まさかここで既に午後を迎えてしまうとは…。道の駅からだともう1400m登っているので仕方ないか。バテバテなので昼食休憩にしたかったんですが、団体さんに陣取られ座る所が無かった為、山頂に向かいました。(写真は帰りの人が居ない時に撮りました)
この辺りが2077mの標高点、つまり本当の意味で山頂です。東へ軽く下った所に2069.1mの三角点が有り、そちらに標柱が立っているのでここは通過してしまいます。
12:49 飛龍山に到着。唐松に囲まれており、眺望は無しですが早くもハラハラと落葉を始めていました。落ち切ったら少しは眺望が得られるかも知れません。
縦走路から外れている為か、誰も居ません。休憩中に1人来ただけで静かな山頂でした。
13:47 下山開始。
14:48 帰りに分岐の岩山から見上げた前飛龍です。大分日が傾き始めていますので、既にこの界隈は人の姿が有りませんでした。
この後、熊倉山着が15:33、サヲウラ峠着が16:01、登山口着が17:20でした。道の駅着時刻は写真を撮り忘れて不明です。