2011年5月下旬、十文字往還道が良かったんで今度は雁坂道に行ってみました。こちらは他に黒岩尾根を歩くコースも有るので往路と復路を変え、雁道場から黒文字橋へ下る事で無理の少ない周遊コースとしました。
スタートは出会いの丘駐車場からです。大きな駐車場でトイレも完備していますから、出発点にするのに都合の良い駐車場です。
5:52 出発。写真は駐車場から見た豆焼橋です。橋を渡り切った所に登山口が在ります。
豆焼橋から見上げた黒岩尾根です。八丁頭から黒岩辺りにかけての稜線でしょう。登山道は裏側の稜線近くを巻いています。
トンネルの左に林道が続いており、ここが登山口になっています。チェーンが張られているので車は入れません。駐車場からここまで7分でした。
少し行った所で舗装区間は終わり、砂利道に変わります。沢筋の所で水に削られるのを防ぐ為か、部分的に舗装されていますが大部分は砂利です。
6:18 20分弱で林道終点に到達しました。豆焼橋から1.5kmなので時速4.5km/hペースですね。こんなペースでずっと歩けたら40km位の行程は普通にこなせるでしょうが、ここからは勾配がきつくなるのでガクンとペースが落ちてしまいます。
黒岩コースはこんな道が延々と続きます。バンクしているので山側、つまり右足首がずっと外側に捻られた状態になり、ストレスがハンパではありません。私はミドルカットの靴を履いているので足首は自由に動きますが、ハイカットの人は膝がやられちゃうんじゃないですかね。
7:11 あせみ峠に到着。急な登りはここまでで、この先からは幾らか緩みます。ここにはコース上で唯一ベンチが置かれ、長い急坂に疲れた脚を休める事が出来ます。
手前の1428m点から派生した尾根を乗越すと道が良くなり、水平な道になって足首の負担が減りました。この先も暫くこの状態が続きますが、八丁頭を巻きにかかると再びバンクした道になり稜線近くまで終わる事がありません。
コース上は道標が頻繁に立ち、雁坂小屋までの距離が書かれているので励みになります。それぞれのポイントには「火打石尾根」「かつら久保」「ふくろ久保」「直下水晶谷」と言った感じで名が付いていました。
黒岩が近くなると写真のような桟道が幾つか現れます。丸太を組んだ桟道なのでデコボコですが、特に歩き難いとは感じず、板の物よりがっしりとして丈夫な為、逆に安心出来ました。
8:53 黒岩展望台の分岐です。下から登って来ると指導標が見え難いので立ち寄る場合は注意が必要です。
展望台といってもただの岩山でした。分岐から近いですが、木を掴んで登る様な急登の為3分掛かりました。下りも同じ位です。
360度の展望がありました。水晶山から雁坂嶺にかけての稜線が大きく視界を占めます。近眼の私でも木の1本1本が確認出来る程近いです。15分休憩して登山道へ戻りました。
9:37 有名な便所が見えました。雁坂トンネルが開通するまではこの登山道が国道140号に指定されていて、この様に便所の中を通っているので便所国道などと呼ばれていました。小学校の時、登山好きの先生からその話を聞き、1度見てみたいと思っていた所です。
奥に見えるのが雁坂小屋です。管理人は常駐している訳ではないらしく、人の気配が有りませんでした。静寂の中で水桶に流れ落ちる水音だけが響き、静かな別天地です。
9:55 日本三大峠の1つ、雁坂峠に到着です。他の2つは北アルプスと南アルプスですから、今後も登る事は無いかも知れません。1つだけでも制覇出来て良かった。しかし、そんな超有名峠であっても土曜日だと言うのに誰一人居ません。西沢渓谷からでも3時間以上掛かる様なので早過ぎるだけなんでしょうか。
案内板によれば日本武尊が蝦夷平定の為に利用した道とあり、日本最古の峠と言われているそうです。埼玉側は原生林の中を登って来ましたが、山梨側は一面の笹原で非常に眺めが良いです。何故この様な植生になったのか不思議です。
午前中は富士山がうっすらと見えていました。右の山は国師ヶ岳、朝日岳、金峰山の連なりですが、まだ馴染みが無いのではっきりと区別は出来ません。
さて、15分ほど休憩した後、昼食には早いので雁坂嶺へ向かいました。実は今回ここに登ったのは偵察も兼ねています。西沢渓谷を基点に雁坂峠から甲武信ヶ岳へ回り、木賊山から西沢渓谷へ下山する周遊コースを歩きたいと思っていたのですが、体力的にどうなのか不安でした。1番苦しい戸渡尾根を下りに取っても12時間に及ぶハードコースです。休憩を含めれば14時間はみなければなりません。
歩行距離は今回24km位だったので大差ないと思います。標高差も100m位しか変わりなく、心配な戸渡尾根1300mの下りは、黒文字橋が低い所だけに雁坂嶺から1400mの下りとなり、むしろ今回の方が多かったです。何か行けそうな気がして来たので、夏至に近い頃挑戦してみようと思います。
10:46 案内図に書かれていたコースタイムより5分オーバーの35分で山頂に着きました。いやー、思っていたより峠から距離があります。脚の疲れもあり、なかなか着かないので実時間より長く感じました。考えてみれば4時間半、1200mの登りですから疲れて当然です。
ここで今日初めての登山者に会いました。1つしかないベンチをその2人組に占領されているので、撮影だけしてすぐに山頂を離れ、50m位戻った所で小さな草地を見付けて昼食休憩としました。木陰なので山頂より快適でしたから、返って良かったです。
昼食を終えたら昼寝タイムです。横篶山以来癖の様になってしまいました。実際に眠らなくても横になって寛ぐだけで脚の疲れが取れるんです。この日はと言うと、木陰の気持ちよさから本気で眠ってしまいました。太陽が移動して眩しさから目が覚めるまで、1時間以上の睡眠でした。山頂を後にしたのは12:15頃だったと思いますが、歩いていてもフワフワした感じがなかなか収まらず、雁坂峠で再び10分休憩としました。
12:56 雁坂小屋から川又への道が分岐しています。帰りはこちらを通り、途中から黒文字橋へ下る道を使い駐車場へ戻ります。かつての往環道は地蔵岩から孫四郎峠、山頂と経たのち雁坂峠に下っていたそうなので、地蔵岩までの区間はその後に造られた新しい道と言う事になります。
13:20 豆焼沢を通過します。地形図だともう1つ先の沢筋になっていますが、そちらは水の無い涸れ沢でした。ここで顔を洗ったり水を汲んだりして1分位留まったので、ログデータを見れば場所の特定は確実です。地形図の豆焼沢は素通りしているので間違いありません。意外と多いんですよね、地形図の間違えって。
雁坂小屋で使う水はここから引いているみたいです。道沿いに黒いビニールパイプがずっと続き、上流に見える取水タンクに入っていました。小屋から24分、スピードの出るトラバース道だった事を考えると1kmは軽く超える距離だと思います。
14:03 地蔵岩分岐です。ログデータを見ると、小さなアップダウンを繰り返しつつ徐々に高度を上げ、この位置ではむしろ雁坂小屋より標高が高くなっています。この先で下り始めるまで、1時間以上の長ーいトラバース道でした。
展望台への道は薄い踏み跡程度で、稜線に対し斜めに進入するので元の場所に戻るのは難しいです。最初からそういうものだと思って踏み跡は当てにしない方が良いでしょう。私も戻る時に見失ってしまい、方向感覚のみで往環道まで戻る事になりました。写真の地蔵岩が見え始めるまで僅か3分ですから、落ち着いてさえいれば何でもない距離です。
地蔵岩展望台からの眺めが1番印象的でした。逆光になる時間帯になってしまったので写真はアレですが、左から雁坂嶺、東・西破風山、木賊山、甲武信ヶ岳、三宝山と奥秩父主脈を代表する山々が続き、壮観な眺めです。
14:46 地蔵岩から約25分で樺避難小屋です。この辺りには唐松の巨木が林立し圧倒されます。実際、写真の木なんかも幹周り3m位有ったんじゃないでしょうか。
避難小屋内部は窓が大きいので明るく、快適そうです。入口近くには白泰山に有った様な薪ストーブが。その奥に見える赤いパイプフレームの物は発電機みたいですね。色々充実してますな。燃料が入っているかは知らんけど…
少し進むと一面が黒木に変わりました。モミやツガの大木です。これだけ周り中を覆われているのに暗さが全く無いですから、杉なんかとは全然違います。十文字道と雰囲気がそっくりでした。
15:14 突出(つんだし)峠です。ここを過ぎると急な下りに入って行きますが、まだ暫くは同じ様な黒木の林が続きます。しかし、高度を下げるに従い細く小さな木になり、葉が煩い感じになって行きます。
ここから南東に伸びる尾根には三角点が有り、もしかしたら細い道でも有りはしないかと期待したんですが、残念ながら踏み跡さえ有りませんでした。天狗岩トンネル辺りに下りられれば、駐車場に戻るのが随分楽になるんですけどねぇ。
突出峠から15分位下った所に生えていたミズナラの巨木。ぶら下がったプレートにミズナラの結実の試験と書いてあったので多分ミズナラなのでしょう。この日も沢山の巨木を見ることが出来ましたが、このミズナラがチャンピオンでした。4mクラスです。
15:46 雁道場(がんどうば)で往還道を離れ、黒文字橋に下って行きます。この辺りはもう植林地なので、往還道に未練は残りません。
30分程植林地の九十九折を行くと簡易舗装された林道に突き当たりました。更に約10分この林道を下ると黒文字橋です。この道は妙に獣臭く、あちこちに糞が大量に落ちていました。大きさから多分サルの物でしょうが、数が多いので群れは大きそうです。
16:28 国道140号線に出ました。左に少し見えているのが黒文字橋です。軽く休憩した後、約40分掛かって駐車場に戻りました。駐車場着は17:12です。