2011年9月下旬、先週の飛龍山に続き再び奥秩父主脈へ行って来ました。飛龍山と雁坂嶺の中間に位置する笠取山、唐松尾山です。飛龍山は比高1400mオーバーのハードな登山でしたが、今回は標高1350m付近から登り始めるので、距離はそこそこ有るものの大分楽な登山になりました。
6:38 三ノ瀬を過ぎ更に奥へ行くと、中川橋の手前に駐車スペースが在ります。あまり広くはないので、全ての車が自由に出入りする為には4〜5台が限界でしょうか。既に2台有った横に車を並べ出発です。
6:49 車道を歩いて中川橋、中島川橋を渡り、この中島川口から登り始めます。笠取山だけなら作場平口、唐松尾山だけなら三ノ瀬口が近いですが、縦走するなら中間に在るここが便利です。
指導標にぶら下がっている案内です。黒エンジュ尾根を登り、水干(みずひ)の下を通って笠取小屋に行くか、水源巡視路から一休坂を経て笠取小屋に行くか、ここに至ってまだ迷っていましたが、これを見て決着しました。危険を冒してわざわざ崩落地を通る必要は無いですね。
7:02 一登りで馬止です。水源巡視路は左後方から正面に抜けています。地形図通りなら一通り沢を渉った後、高丸戸尾根を登って牛王院平(ごおういんだいら)手前で七ツ石尾根の道に合流している筈です。予定ではこの道を下って来るつもりでした。
登山口に「クマ出没注意」の張り紙が有ったので、ここで熊鈴を装着しました。いよいよ山深くに踏み込みます。
暫くは檜の植林帯ですが、やがてこの様に自然林に変わって行きます。この一帯はスズタケがもの凄く元気でした。林床にビッシリと茂ってて、いきなりクマが飛び出して来やしないかとビクビクものです。ここに多く見られるブナやミズナラはいわゆる「どんぐりの木」ですから、結実する今頃は本当にいつ出会ってもおかしくありません。
小さな沢は幾つか渉りましたが、この一ノ瀬川はこんな所で既に結構な水量です。上流の水干が多摩川の源頭とされているので、即ちこれが多摩川源流です。
今週直撃した台風の影響か、倒木が何箇所か道に掛かって邪魔でしたが、道そのものには被害が無く快適な道でした。
7:56 一休坂に着きました。左の作場平から右の笠取小屋へ登っているこの坂が一休坂だと思います。水源巡視路はここで終わりではなく、案内板を見る限りヤブ沢を越え更に先へ続いている様です。恐らく石保戸山の方まで続いているんでしょう。
ここで10分休憩です。私の到着と入れ違いに1人出発し、休憩中にまた1人通過しました。中々の登山者密度です。露払いも居る事だし、音も煩く感じてきたので熊鈴はここで外しました。
一休坂を登っているとこんなのが幾つか見られます。新しくはないけど明らかに熊の仕業ですねぇ。威嚇行動でしょうか。
笠取小屋までもう少しという所で石垣が現れました。路面は更に手が込んでいて、石畳の隙間をコンクリートで埋めてあります。元々の地面は砂礫みたいなので、放っておくとどんどん崩れてしまう為こうしているのでしょうが、こんな山奥でよくぞこんな工事をしたものだと感心してしまいました。しかし、それを可能にする理由をこの後知ります。
笠取小屋のすぐ下には水場が在ります。今日はここに水場が在ると分かっていたので、カップラーメン用の水は持って来ていません。早速空きボトルに詰めます。
最近は鹿が増え過ぎてしまって沢の水などは不用意に飲めません。大腸菌が検出される水場も有るくらいです。沸騰させるから関係ないと言う人も居るかも知れませんが、私は気持ち悪くて使いたくないです。この様に水場として管理されている所の水だけです。
8:43 笠取小屋は改装工事をしている様でした。そして目を疑ったのは、ここまで乗り付けている車が置かれていた事です。一体どこを通って来たんでしょう。奥には小型のパワーショベルも有りました。いずれにせよ、ここまで車で来られるのであれば、資材の搬送は簡単です。先程の大掛かりな歩道整備も、これで納得がいきました。
小屋から10分足らずでこの分岐へ着きます。左が雁峠、直進が笠取山です。
正面に見えるのは「小さな分水嶺」と名付けられた小峰で、主道は右を巻いていますが、やはり立ち寄りたい場所です。
8:54 小さな分水嶺に着きました。雨はここを境に北は荒川、東は多摩川、西は富士川へと分かれ、それぞれ長い旅路の果てに海へと流れ込みます。尚、ここで荒川側に降った雨が最初に流れ落ちるのはブドウ沢で、そのブドウ沢が滝川に流れ込む辺りが、記憶に新しいあの3重遭難の事故現場です。
分水嶺を下るとその先にも似たような小峰が在りました。道はまたもや巻いていて、踏み跡がピークに向かって分岐しています。今度のは巻いてしまって大丈夫です。越えた所で再び合流した後、笠取山頂方向と水干方向に分かれます。私は知らずに登ってしまいましたが。
ガスってしまって何となくしか見えませんが、西から見る笠取山は綺麗な円錐型をしている様です。
登りに掛かると、あれほどガスっていたのがあっと言う間に晴れました。これなら山頂からの眺望に期待が持てます。
鞍部から比高およそ120mのキツい登りでしたが、登り終えた印象としては、蕎麦粒山の桂谷ノ頭からの登り返しと大差ない感じでした。
9:16 笠取山(西峰)に着きました。山梨百名山の標柱が立ちますが、ここは東西に長い山頂部の西の外れです。しかし、これほど眺めの良い所はここ以外に有りません。
雲海に浮かぶ富士山が見えます。左は多分大菩薩嶺でしょう。感動的な風景です。雲ひとつ無い快晴よりも、むしろこの方が良かったかも知れません。
北に目を向けると特徴的な黒岩展望台が遠くに見えます。あそこが5月に登った黒岩尾根です。という事は、その左側のピークが雁坂嶺、更にその左手前の大きな崩落地が目立つ山が水晶山、更に更にその左手前が古礼山という事になります。その鞍部に見える遠くの山は木賊山でしょう。
左端で雲海から頭を出しているのが先週登った飛龍山です。右端近くには、もう見慣れて一目でそれと分かる国師ヶ岳と奥千丈岳の連なりが一際高いです。あまりの眺めの良さに離れ難い山頂ですが、次々と詰め掛ける後続で段々居心地が悪くなり、9:37 山頂を後にしました。
9:43 露岩の稜線を暫く進むと、再び笠取山の標柱が目に入ります。ここが1953mの最高地点です。眺望はほぼ有りません。写真だけ撮って通過です。
稜線は岩ばかりでなく、土の平坦地も在ります。そんな所ではこの様に石楠花が多く見られました。不思議なんですが、穂先には蕾が付いています。石楠花とは蕾を付けて越冬するものなんでしょうか。それとも狂い咲きの前触れでしょうか。
下りに変わり暫く行くと丁字路にぶつかります。右は巻き道で、水干を経て先程通った小さな分水嶺の方へ向かっています。左が唐松尾山方向です。
10:09 黒槐山(くろえんじゅやま 2024m)を過ぎるまで稜線の少し下を歩きます。結果的に黒槐山は巻いてしまいます。踏み跡が有ったら寄ろうと思っていましたが、それらしい所は有りませんでした。写真の正面左辺りが山頂の筈です。
稜線近くではスズタケから背の低い笹に変わっています。ミヤコザサかクマザサでしょう。
これぞ奥秩父の原生林って感じです。黒木の森と苔、笹の林床。手前の木にサルオガセがぶら下がっているの分かりますか?
11:16 そろそろ唐松尾山だろうと思っていたら、いきなり「将監峠」を示す指導標が有ってびっくり。「しまった、行き過ぎた」と一瞬思いましたが、良く見れば丁字路になっていて、左へ10mほどで山頂でした。
山頂はご覧の様に眺望無しです。しかし、奥へ道が続いているの分かりますよね。そうなんです。地図には載ってませんが、北へ一本の道が延びています。恐らく滝川にかつて在った釣橋小屋辺りに下っているのでしょう。少し奥で枯れ枝を利用したバリケードが厳重に塞ぎ、迷い込みを防止しています。その横をすり抜け、3分ばかり進むと小さな岩場になっていて展望が開けます。
ここで昼食休憩にしようと岩場までやって来ましたが、完全に雲の中で白一色でした。笠取山みたいに奇跡的に晴れないか期待したんですが、2度目は無かったです。
12:14 休憩を終え出発。
単調な道を下っていると、突然崩落地に突き当たりました。道はそこで折り返し、数回ジグザグを切って高巻きに回避しています。道の状態から最近のものではない様ですが、先日の台風で更に酷くなったみたいで、新たな道のぎりぎりから崩落が始まっていました。
12:53 山の神土(やまのかんど)に到着。変形十字路を将監峠方向に行きます。右へ鋭角に行くと黒エンジュを経て笠取小屋に戻ってしまいます。
左は西仙波・東仙波を経て和名倉山に至る道です。私的に大変興味有る道ですね。和名倉山はもう一度登ってみたい山ですが、どうせ登るなら埼玉3ルートの残りどちらかを使いたいので、この道は優先順位が落ちてしまいます。しかし、ネットで見掛ける仙波辺りの開放的な景色を見るにつけ、いつかは歩いてみたいと言う思いが強くなります。
12:59 すぐに牛王院平の分岐です。指導標柱に「牛王院平」とありますが、ここを含むこの辺り一帯のなだらかに起伏する地形を指すのでしょう。ここは三ノ瀬方向に行きます。
鹿除けネットが在りました。最近設置したものらしく新品です。設置のために刈った所が道に見え、間違えて行っちゃいそうでした。結び目をほどいて中に入り、再び結び直して先に進みます。全部で3箇所在りました。
高丸戸尾根への道は、牛王院平のなだらかな道から徐々に傾斜を増す辺りで分岐している筈です。それらしい分岐は確かに在りました。しかし、指導標が無いので自信が持てず、結局七ツ石尾根を下ってしまいました。地図に無い仕事道も結構在って非常に紛らわしいです。
13:45 牛王院下に着きました。ここからは将監小屋から下る林道に合流し、三ノ瀬までこの林道を歩きます。
終わりが見えたので、ここで15分休憩。いつの間にか日が差していて、木漏れ日の中での休憩でした。でも山頂の方を見ると相変わらず雲の中です。
14:18 三ノ瀬登山口に到着。ここからは舗装路を歩きます。
14:30 駐車場に到着。1台無くなり別の車が1台増えています。