先月の秩父槍ヶ岳の時に途中で諦めた高ドアへ行って来ました。衛星写真に大きな伐採地が写っていた為、山深くに在ってもある程度安心出来たからですが、山行記が1つも見付からない山は初めての事です。本当に登れるのかは実際に行ってみるしかなく、不安と緊張の登山になりました。
9:49 秩父槍ヶ岳の時と同じく、相原橋駐車場から出発しました。林道らしき筋がこちらの方へ伸びていたので、この辺に取り付きが有るに違いないと踏んでいたのです。予想通り石垣の終わりから道が続いていました。
確りした道がジグザグに登っています。最近間伐したばかりの様で、切り口の新しい丸太が幾つも脇に転がっていました。
5分ほどで尾根上に着き、道は終わってしまいました。ここからは尾根筋を直線的に登るしかありません。初めだけ腰位の低木で藪っぽいですが、直ぐに無くなります。踏み跡は確り続いていました。
短い渡り廊下状の細尾根を過ぎるといよいよ本番です。壁かと思う様な斜面が目の前にそそり立ちます。バリエーションルートは奥多摩で幾つか登りましたが、ここはレベルが違っていました。立ち姿勢で登れる限界ギリギリの斜度でしょう。帰りは正面を向いて下りる事が出来ず、横向きか木に掴まりながら後ろ向きに下りるしかありませんでした。そんなのが高さ400mも続くのです。
10:25 再び細尾根の渡り廊下になりました。ほんの35分登っただけで汗だくです。ここで休憩がてらシャツを着替えました。いつもシャツからの汗が伝わりズボンまでびしょ濡れになってしまうので、今日は替えのシャツを2枚用意して来たのです。下から涼しい風が吹き上げて来るので、汗が引くまでの間暫く裸でいました。生き返る思いですが、まだ道路を走る車の音が聞こえて来る距離です。あまりのんびりしてはいられません。
石垣が有りました。こんな急斜面に炭焼き窯を作るとも思えないですし… 何でしょう?
大岩に尾根が塞がれています。明らかな踏み跡が左へ巻いていました。ここに限らず、方々で踏み跡が感じられます。時々ここを歩く人は居るようですね。
10:45 特徴の有る大木が目に入りました。水平に近い感じでこちら側に傾いています。GPSで現在地を確認すると、まだ急登部分の半分しか来ていません。1時間も登ってこれっぽっち? 諦めて帰っちゃおうか。いやいや、折角苦労してここまで登ったんだから、ここで止めたら無駄になってしまう。心の中で葛藤が始まりました。
我慢して登って行くと放置されたワイヤーが目立ってきました。写真が小さいので分かり難いですが、目の前のワイヤーは大きくループして後方に伸びています。他に丸く束ねた物、木に巻き付けたままの物など、そこここに散見されます。
防火帯になりました。暫く登って行くと、前方に青空が見えるじゃないですか。そうです。やっと急登区間の終わりが見えて来たのです。しかし、気持ちばかりが先に行き、一向にあの空へ近付きません。あー、もどかしい。誰かロープで引き上げてくれ。
ふと振り返ると素晴らしい景色が控えていました。両神山に向かって防火帯が一直線に伸びています。
11:24 伐採地に出ました。あれっ? 林道と思っていたのに違ってました。しかし、こういう不意打ちは大歓迎です。再びびしょ濡れとなってしまったシャツを脱ぎ、気持ちの良い風に晒されます。手頃な低木にシャツを着せて乾かしておき、10分ばかり休憩して出発。左から尾根が合わさるあの少し先がp1297です。凄く近くに感じますが、実際は結構距離が有りました。突然の空間の広がりに錯覚を起こしているのです。
1番上の図を見て下さい。あくまでも平面図上ですが、ここは出発点とp1297の中間点に過ぎません。
そして左が、ここに林道が在るとした根拠の写真です。実際は防火帯だった様ですが。現在は東斜面が伐採され、日当たりが良くなった防火帯には低木が蔓延って見た目が一変しています。
尾根に沿って何かのケーブルが続いていました。感電が怖いので触れぬ様に注意して歩きましたが、正体はテレビのアンテナケーブルでした。気を使って損した。
こっ、これは!? やっぱりヤツの糞でしょうか。そうですね。そりゃあ居ますよね。奥武蔵にだって居るんだから、ここに居ないわきゃない。勿論熊鈴は付けています。
尾根の合流する辺りに謎の物体が…って、山仕事の道具が置かれているんでしょう。誰でも分かります。やっぱり杣人が定期的に訪れている様ですね。
12:16 おおっ、凄え景色。やっとp1297に到着です。駐車場から2時間25分掛かりました。コンサイス槍までとほぼ同じ時間です。距離は大分違うのですが。
目の前は懐かしい栃本尾根です。西に目を移すと白泰山が高く聳えています。こんな凄い景色を杣人がほぼ独占していたんですか。
12時を過ぎていたので高ドアは後に回し、昼食休憩にしました。ついでに最初に着替えたシャツを干しておきます。
13:09 休憩を終え、高ドアに向けて出発しました。往復するつもりなので荷物は置いて行きます。
高ドアとの中間点辺りに小屋が見えます。営林小屋でしょうか。
中を覘くと畳が半分腐っており、今は使われていない様子でした。
直ぐ近くに休憩所の残骸みたいな物も。
それにしても暑い!! 剥き出しの地面が太陽に熱せられ、輻射熱が凄いです。夏には向かない山ですね。
伐採地の終わりから高ドアまで道が在るのか心配でしたが、全く問題有りませんでした。広い尾根道が通っています。
奥秩父・中津渓谷景勝地マップによると、大滑沢北岸は山神尾根となっています。どの尾根を指すのか分からないのですが、主尾根の名だとするならば、今歩いているこれこそが山神尾根です。
平坦路からほんの10m位登れば高ドアです。手前に大きな岩が有り、大滑沢側が切れ落ちているのでやや緊張しました。
13:22 山頂に着きました。私が探した限りでは、ネット上に山行記はおろか、写真1枚とて無い謎の山でしたから、こうしてここに立つと感慨深いものがあります。人跡未踏の山に立った様な気になりました。実際にはご覧の様に人跡だらけで、地元の人にとっては普通によく来る山の様ですが。
三角点名「中双里」。1198.4mの三等三角点です。三角点マニアさんのページを廻っても、ここの写真は無かったですから貴重な1枚なのでしょう。大き目の写真にしておきました。
さて、折角ここまで来たのだから、爪痕を残すとしましょうか。山名板を作ってきたので木に括り付けます。今後も恐らく一般登山者の目に触れる事は無いでしょうが、いいんです。自己満足でやってるんだから。
再びp1297に戻って来ました。復路は登りになるので約23分です。またしてもシャツがびしょ濡れになってしまったので、干しておいた物と替えました。半乾きですが、今着ている物よりマシです。パノラマ写真を撮ってない事に気付き、遅らばせながら撮影。到着から2時間近く経っているので、最初に見た時より雲が多くなってしまいました。
あの急斜面を下らなければならないのかと思うと気が重いです。広げたままだった荷物をのんびり片付けながら、また20分以上まったりと過ごしました。
14:12 離れ難い思いですが、意を決して出発。腰高位の低木で藪化しつつある道を下って行きます。今の所は何とかルートが見えますが、今後はどうなって行くか分かりません。それにしても、この藪は躑躅の様に見えます。もしかしたら春には花畑となるかも知れません。
14:33 急下りの始まる所に着きました。往きに干しておいた服を回収して着替えます。都合4回着替えた事になりますね。おかげでズボンは少し湿った程度です。
14:45 一服していよいよ急斜面に突入して行きます。写真を小さくしたら分からなくなってしまいましたが、アンテナケーブルがここを横切っていました。p938経由で中双里集落に向かっているのだと思います。ケーブルを追いかければ迷わずに中双里へ下りられるかも知れないですね。駐車場に到着したのは15:50 でした。
これを見てもし行こうと思ったなら、下りは野鳥の森歩道を使うなど、どこか安全なルートを考えた方が良いでしょう。どうしてもこのルートを下るのであればGPSナビは必帯です。地形図なんて物の役に立ちません。急斜面過ぎて自分が尾根に乗っている実感が無いのです。事実私も下に道路が見えた途端そちらに引き込まれ、コースミスをしてしまいました。野鳥の森歩道を歩いた人なら分かるでしょうが、もし間違えて相原沢の方に下ってしまったら、不幸な結果が待ち受けているに違いありません。