天祖山

天祖山(1723.2m)/水松山(1699.2m)/ウトウの頭(1587.9m)

天祖山登山図

2011年1月中旬、滝谷ノ峰近くに最近出来たヘリポートからの眺めが凄く良いらしいので、これは是非見ておかなければと思い出掛けました。久し振りの平日山行なので、こんな奥地では万が一の時通り掛かる人もおらず不安なのですが、今を逃したら雪が積もって登れなくなってしまいますから仕方ありません。ウトウの頭も前から行きたい所だったのでタワ尾根を使うのは即決でした。


小川谷橋

同じ道をピストンではつまらないですから、こちらもいつかは登りたいと思っていた天祖山を経由しました。どっち回りでも構わないのですが、出来れば下山後は長く歩きたくないので、約30分の林道歩きは元気のあるスタート時に済ましてしまい、天祖神社の表参道になるハタゴヤ尾根を登って行きます。

6:44 一石山神社前の駐車場に車を止めてスタート。岩から染み出た水がつららになっていました。気温は氷点下だと思います。

登山口

7:15 八丁橋を渡るとすぐに登山口です。前方の八丁山斜面に見える白い物が気になり、近付いて見ると滝でした。上から下まで完全に凍り付いてます。様子を見ていると車が1台通過。どうやら雲取山へ向かう様です。林道を奥まで進むと登山口が在り、3時間程度で行けるみたいです。

九十九折れ

登り始めは石組みの九十九折れを行きます。よく整備されていて登り易いのですが、とにかく急勾配で参ってしまいます。20分で稜線に達し尾根道に変わりますが、そこからも引き続き急勾配です。

何年か前にここで連続転落事故が有ったそうです。一人目の救助をしている時に、更に二人目が同じ場所から転落して来ると言う、ちょっと信じ難い事故です。いずれも天祖山から下って来て、尾根道から九十九折れに変わる所でバランスを崩し転落したそうですから、下りで通る時は気を付けましょう。

大日神社

8:13 傾斜が緩んだ所で両脇に木が並ぶ一直線の道になりました。事前の調べでコース上のどこかに在ると知っていたので、「あっ、これは大日神社かも知れない」と思いながら進むと予想通りでした。

神社前の指導標中央に大日大神(おおひのおおかみ)と書き加えられています。廃神社らしく中は随分荒れてましたが、それ以上に何人かの心無い人が捨てて行ったゴミが目立ちます。こういう人達には山に入って欲しくないですね。

山頂と雲取山

8:45 p1355に着くとようやく急勾配が終わります。ここ迄で半分来たかどうかですが、山頂迄の2時間半のうち、1時間半が過ぎていました。

ここ迄来てやっと山頂が見えます。その後ろには雲取山も。

ダケカンバ

周りに目を遣る余裕が出来、美しい自然林を眺めながら登って行きます。冬の深い青空にダケカンバが輝き一層綺麗でした。いやー、来て良かった。こんな天気の良い日に家から山を眺めていたら、歯ぎしりが止まらない所でした。

社務所

山頂に近付くと雪が積もっていました。そんなに厚いわけでもなく、モナカ状なのでアイゼンは要りません。一頭の鹿が鳴き声を発し、それを合図に10頭位の鹿が逃げていきました。ごめんよ、食事の邪魔をして。

山頂手前200m位の所に社務所らしき建物が在り、脇にはトイレも有りました。和式のボットンですが、緊急時には借りられそうです。

最近知った山の隠語にキジ撃ちというのが有ります。要するに立ちションの事ですが、そこから転じて大の事を大キジと言います。手頃な藪も無い所ですから、大キジをするよりは無断で借りた方がマシです。

天祖神社

9:43 山頂は天祖神社です。規模は小さいですが立派な造りです。下の社務所も含め、こんな山奥によくこれだけの物を建てたと、つくづく感心してしまいます。

山頂

神社裏から見る雲取山はすぐそこに見えます。山肌には雪がびっしり。標高は300mしか違わないのですが、その300mが大きいのかも知れません。

下りは北斜面なので雪が多いですが、なだらかに下っているのでそれ程気になりません。しかし、続くナギ谷ノ頭からは激下りです。雪が無くても苦労しそうな所なので、非常に神経を使いました。

ナギ谷ノ頭下り

ナギ谷ノ頭を下り切った所です。東斜面は一面雪で、尾根を隔てた西斜面が全く違うのが面白いですね。目の前の小ピークを越えた所が梯子坂のクビレです。孫惣谷へ下る道が分岐していましたが、崩落箇所が有るとかで通行禁止でした。

続く梯子坂ノ頭では、ある程度登った所からピークを巻いています。そこからは長沢背稜縦走路に合流するまで、アップダウンの少ないトラバース道です。

長沢背稜への合流点

10:47 長沢背稜への合流地点です(一般に長沢背稜と言えば長沢背稜縦走路を指しますので、ここからはそのつもりで読み進んで下さい)。雲取山方向へ向かうには、ここを曲がって稜線を跨ぎ、北斜面に移るそうですから分かり難い場所です。ここで道を間違える人が多いと言うのも頷けます。

道標の無い分岐

水松山(あららぎやま)南の尾根を回り込む所で山頂への道が分岐していました。道標は有りませんので、うっかり通り過ぎないよう地図を見ながら進んだ方が良さそうです。

ここを登り切ると境界見出の杭が立つピークに着くのですが、それは山頂ではありません。一旦窪地に下り少し進むと本物の山頂が在ります。

水松山

11:00 ここが山頂です。足元に三角点、松の幹に山名板が括り付けてあるので間違い無い筈です。辺りには鹿の足跡が沢山付いていますが、人間の物は1人分だけ。どう見ても新雪ではないので、数日間でここを訪れたのは1人だけと言う事になります。ううむ、縦走路から外れているのでここに来る人は少ないのだろうか。

ヘリポート

11:23 東の稜線を下り、再び長沢背稜に合流するとすぐにヘリポートへ着きました。稜線の一部を凹型に削り、平らに均してあります。

噂通りの好展望です。ここは南の県境ですが、北の県境を越え西上州の山々までクッキリ見えます。前橋辺りの街並みと赤城山も見えました。

両神山と浅間山

両神山と浅間山。こんな2ショットは冬だけです。


石尾根と天祖山

南側は登って来たハタゴヤ尾根です。雲取山から続く石尾根と天祖山が重なる所には富士山も見えます。こちら側から見る天祖山は、武甲山を思わせる様な段々の山肌でした。ここでも石灰石の採掘が行なわれているみたいです。

それはそうと、北から見る天祖山は雪が目立ちます。もしかすると、雲取山も実際に行けば雪は大した事無いのかも知れません。

この後、長沢背稜を外れて滝谷ノ峰へ登るつもりだったんですが、ヘリポートからの眺めに気を良くしてすっかり忘れてしまいました。気が付いた時はまだ引き返せる段階でしたが、タワ尾根側からピストンすれば良いかと思い、そのまま進んだのが間違いでした。

タワ尾根

11:36 タワ尾根へ少し踏み入った所から滝谷ノ峰方向を見上げた写真で、中央辺りに長沢背稜が水平に通っています。広角レンズによる撮影の為全然大した事ない登りに見えますが、実際は急斜面で高さも有ります。20m位登ってみたのですが、落ち葉に足を取られズルズルと滑り落ちてしまいまい、労力の割りに進む距離は僅かです。馬鹿らしくなって山頂に立つのを諦めました。

日当たりが良いのでここで昼食休憩とし、12:32 ウトウの頭に向かいました。

モノレール

以前見たタワ尾根分岐の写真では、一面がスズタケの密生地でした。何年頃の写真だったか記憶に有りませんが、数年で完全に消えて無くなりました。ここも鹿による食害だと思います。歩き易くなったのは助かりますが、こんな急激な変化は何か影響が有りはしないかと心配になってしまいます。

少し進んだ所でモノレールが現れます。暫くそれに沿って進みますが、尾根幅の狭まる所では中央を陣取ったモノレールが非常に邪魔です。ずっと同じ側を歩けないので、度々跨いで反対側に移動しなければならないのが煩わしいです。

ウトウの頭

13:18 ウトウの頭に到着。有名なウトウの絵が描かれたプレートも見てきました。触れてみるとずっしりと重いです。2010年9月作成の最新作は陶板製です。

この辺りは露岩地も多く、踏み跡が分散する為道を見失いがちです。ウトウの頭手前(滝谷ノ峰側)の窪地から登り返す所では、薄い踏み跡が幾つか絡んで分かり難くなり、ちょっと戸惑いました。それぞれの踏み跡を目で追ってみると、結局は同じ所に行き着く様に見えるのでどれを通っても良さそうです。まあ、尾根を外さぬ様に注意して行けば大丈夫でしょう。

篶坂ノ丸

13:54 篶坂ノ丸(すずさかのまる 1443m)です。手作りの山名板がぶら下がっていましたが、劣化して何が書いてあるのか分かりませんでした。

この辺りはミズナラやイヌブナなど、落葉樹が中心です。

ヤドリギ

途中で出会った奇妙な木。小枝の方向が綺麗に揃っているので、何かの巣ではない様です。調べてみたらヤドリギでした。

金袋山

14:15 金袋山(きんたいさん 1325m)です。篶坂ノ丸からこの辺りまでは、なだらかな広尾根で歩き易いです。この先で少し傾斜が増しますが、人形山辺りはまたなだらかです。

敷居が高そうでなかなか来られなかったタワ尾根ですが、実際来てみると180度印象が変わりました。さすがに初心者にはお勧め出来ませんが、そろそろハイキングコースを卒業したいと考えている方には打って付けです。

一石山

地形図では人形山から尾根が分かれている様に見えますが、実際は少し前から始まっています。道もそれぞれの尾根に付いており、左を行くと人形山のピークを越えて籠岩の方へ下るみたいです。私は右の一石山へ向かったので、実際には人形山のピークを踏んでません。

人形山山頂近くにミズナラの巨樹が有る筈ですが、私の通ったルートには見当たりませんでした。籠岩方向に下りるルートの方だと思います。

14:44 一石山(いっせきやま 1007m)通過。

日原分岐

一石山を過ぎるとすぐにこの分岐が在ります。一目で通行量の違いが分かる程、皆んな左へ下りているみたいです。しかし、下山口と決めていた一石山神社は尾根延長線上の右ですから、ここは尾根を行ける所まで行ってみる事にしました。後の調べでは、左へ行くと人形山から左尾根を下った道と合流するみたいです。

櫟山

なだらかに下る岩稜を約5分進むと、尾根の先端に出ました。ここからは急激に下っています。目の前にヨコスズ尾根が大きく横たわり、なかなかの眺めです。

一見するとここで突き当たりの様に思えましたが、良く見ればこの先も岩が踏まれて磨耗しており、通行量は少ないものの通る人はいるみたいです。

踏み跡を辿るとやがて石段や木階段が現れ、ベンチの置かれた休憩所に行き着きました。しかし、そこからは落石防止の金網フェンスに塞がれ直進出来ません。

東へ下る道

右は下りられる傾斜ではないので、左に進むしかありません。フェンス沿いにはっきりした道が下っています。しかし、フェンスの終わりで回り込む形に踏み跡が付いている様にも見えます。悩んだ末にそのまま道を下りました。

道は尾根をどんどん外れて行き、落ち葉に埋もれがちになり怪しくなって来ました。倒木が道に掛かっていても放ったらかしです。そのうち籠岩も過ぎ、巨樹の道と表示されたルートに合流してしまいました。

15:24 もう1つの登山口に下りてしまいました。目の前の巨岩が籠岩で、左奥に見えるのが燕岩です。下山口予定だった一石山神社は更に先です。

東へ下る道

一石山神社に寄ってみました。この本殿の向かいに社務所が在り、その横に道が続いています。標識類は無いので、知らなければ登山口とは思わないでしょうね。駐車場着は15:32でした。

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