矢岳

矢岳(1357.9m)

矢岳登山図

2011年6月下旬、浦山ダム左岸駐車場から若御子山(わかみこやま)を経て矢岳まで行って来ました。都県境北側の山域はどこも人気(ひとけ)が少なく、山登りを始めて間もない者にとってはハードルの高い地域です。安心して歩けるのは三峰縦走路と有間山位で、その間の広大な山域が初心者にとっては正に秘境です。今回登った矢岳もそんな所の山ですが、未踏地としていつまでも放って置けないので登る事にしました。この山域に踏み込むのは大血川からの酉谷山、シゴー平からの三ツドッケに次いで3度目に過ぎません。


登山口

8:17 浦山ダム左岸駐車場に車を止め出発。右岸にはうららぴあやダム管理所が在るので数台の車が止まってましたが、こちらには1台も有りませんでした。トイレや販売機も近くに在り便利な駐車場なんですが、利用するのは私の様な登山者や散策目的の人が多い様です。

湖畔道路を歩いて2〜3分で登山口です。暫くこの若御子山遊歩道を歩き、若御子峠まで行きます。

若御子山遊歩道

まずは駐車場からも見えていた送電線鉄塔まで、植樹林の九十九折れを登って行きます。すぐに汗が噴出しました。先の思いやられる暑さです。

続いて鉄塔脇の階段を登り、登山口から30分で国見の広場に到着しました。地形図のp606です。ベンチが有るので早くも10分間の休憩。

若御子峠

9:03 国見の広場からひと下りすると若御子峠です。遊歩道は右に憩いの広場へ下っています。若御子山への道や今は廃墟となった若御子集落への道も、この辺りではまだ遊歩道と遜色ない道に見えます。

図

若御子峠から若御子山までは踏み跡程度になり、文面では少々伝え難い厄介な道の為、あらかじめ位置関係を表しておきます。


壊れた祠

若御子峠を真っ直ぐ進むと平坦地に登り着きます。不自然な程平らなので何か建物が在ったんじゃないでしょうか。道はここで左に折れ植林地の奥深くへ続いていますが、恐らく若御子峠で分かれた道と合流して若御子集落に下っているものと思われます。この時前方に見える山が若御子山ですから、道ではなく正面の踏み跡を登って行きます。

壊れた祠の建つ小ピークに登り着きますので、祠の前を通って右に進みます。ここでも東方向に道が下っていますが、かつて若御子集落の人々がここへ来る為に利用した道なんだろうと思います。

崩れた石段

軽く下るとこの崩れた石段になります。登った先が深い溝になっていて、かつての姿が想像できません。山頂に向かう道が在ったのでしょうか。

階段を逸れて踏み跡を辿り、上方に見える鳥居を目指して登って行きます。そこには3つ並んだ祠が祀られていました。この祠の裏手から山頂への踏み跡が続いています。

尾根を塞ぐ巨岩

急斜面を登って行くと、巨大な岩に邪魔されて先に進めなくなりました。しかし、良く見れば岩の右手に踏み跡が続いています。踏み跡は岩の裏側に回り込んでいて、苔の付いたゴーロの中を更に奥へ続いていました。

そこは巨大なスコップで掬った様な地形で、その削られた縁に岩が有る為、もう片方の縁から登り上げる形になってます。潅木に手を掛けながら登って行くと、誰かが残したロープが有りました。登りでは必要有りませんでしたが、下りでは手摺代わりに有難く利用させて頂きました。

若御子山山頂

9:38 山頂に到着です。名前に惹かれてこの山を組み込みましたが、どうなんでしょう。何か微妙な感じがします。北から登って来ると確かに山頂という印象ですが、逆方向からだと山と呼ぶには違和感が有るんじゃないでしょうか。大反山から派生した1つの尾根が、暫く水平を保った後ここで急激に落ちているだけとも取れます。

ダム湖

山頂東側は垂直な崖になっていて、木の間からダム湖が良く見えます。若御子集落はこの方向で、ダム湖との中間辺りに在ったみたいです。

檜の古木と祠

大反山への急な登りが始まる所に檜の古木が生えていました。その傍らには壊れかかった小さな祠も祀られています。これが見えたら不用意に近付かず、音の出る物を鳴らしながらゆっくり進んだ方が良いです。裏側に回って見たら大きなウロが有って、熊1頭位なら収まる大きさでしたから。

浦山地区というのは市街地近くでは熊の目撃・遭遇例が多い所で、実際私もこの日、熊に遭遇しました。場所はクタシノクビレを過ぎた69号鉄塔の下なので大反山を挟んだ向こう側ですが、熊の行動範囲を考えれば目と鼻の先です。

大反山山頂

10:12 大反山の山頂は三角点の在る所になっていました。北からだとピークより少し手前です。若御子山でもそうだったんですが、山名板がこちら向きに無いのでうっかりすると通り過ぎてしまいます。

ここからの下りは意識して右に曲がらないと間違えます。尾根の流れ通りに進むと東の尾根に引き込まれてしまうでしょう。リボンの目印もそちらに有ったので余計に間違えそうです。

69号鉄塔

下りきった鞍部がクタシノクビレで、登り返して少し進むと69号鉄塔に出ます。往きはそのまま通過したんですが、帰りはそこで休憩しました。熊に遭遇したのはその時です。

鉄塔の脚に座り地図を眺めていて、ふと気が付くと既に熊が対角線の脚の内側におり、こちらに向かって歩いていました。いきなり至近距離ですが、中型犬サイズなので成獣ではないらしく、恐怖感は有りませんでした。しかし、近くに母熊がいる可能性も有ります。カメラを取り出し構えているうちに足元まで来てしまいそうなので、熊鈴を鳴らしました。熊は鼻を上に向け匂いで様子を窺っている様でしたが、すぐに人間の匂いに気付きUターンして走り去りました。

急な出来事で写真を撮る暇が無かったのは残念ですが、何事も無かったので縦しとしましょう。

広大な伐採地

11:12 突然広大な伐採地に出ました。ジリジリと日が照って暑い為、慌てて木陰に戻り休憩する事にしました。矢岳(写真中央)まであと少しですが、こう暑くては簡単には辿り着けません。

篠戸山山頂

11:37 伐採地の中央辺り、p1040には篠戸山の表示が有りました。ブリキ板みたいな物に殴り書きされ、ビニールテープで木に巻き付けてます。ちょっとみすぼらしい感じですが、もしかしたら別の木に付いていたのを伐採した人が移したのかも知れません。

篠戸山からの眺望

篠戸山からの眺望です。正面に栗山(丸山)、遠くの稜線(仁田山)と重なる辺りがバラモ尾根分岐、少し登ってデコボコの始まる所が大ドッケ、ピークが大平山、大クビレを挟んで七跳山です。大平山から大ドッケ辺りにかけては有名な藪山ですが、近年は他の山域と同様にスズタケが減退して幾らか登り易くなったとか。涼しくなったら行ってみましょうかね。


ネイチャーランド浦山

眼下にはネイチャーランド浦山が見えます。人工の滝から水音が聞こえる距離です。いざとなったらこの伐採地を下れば何とかなりそうですね。

下りにかかり、伐採地を抜ける直前でふと時間を見ると、もう11:44でした。陽射しさえ避ければ風が良く通り、眺めも良く快適ですので、休憩後間もないですが再びここで昼食休憩。

デンゴー平

12:31 休憩を終え出発。また鬱蒼とした木立の中へ突入して行きます。

2〜3分で下り切り、登りに変わります。地図にデンゴー平と書かれた場所です。名前が付くほど特別な場所には見えませんでしたが。

登山道

矢岳までは見た目以上に遠く、途中には幾つもの騙しピークが存在しました。ここを登りきれば山頂だろうと思いながら登るのですが、何度も裏切られます。

それにしても、枯れ枝などが散乱しているものの、道そのものは大変しっかりしています。踏み跡程度だろうと思っていましたが、全く違っていました。まあ、矢岳などはほんの入口で、実際に厳しくなるのはその先の赤岩ノ頭、立橋山といった所らしいですが。

矢岳山頂

13:46 矢岳に到着しました。4時間位で着くだろうと思っていたのですが、5時間半も掛かっています。暑さにやられて歩けていないのか、思った以上に厳しい道のりだったのか…多分その両方なんでしょう。

山頂には秘峰らしからぬ数の山名板が並んでいました。白地に青文字の山名板はあちこちで見掛けますね。誰なんでしょうか。14:08 下山開始。

モミ

p1144近くのモミです。幹周り4m位でしょうか。なかなかの巨木です。

フナイド尾根分岐

p962です。ここからフナイド尾根が分岐しますが、主稜線の方が左に折れているので見た目はむしろフナイド尾根が主尾根に見えます。登りで1度通っていますが、うっかりすると立派な道が続くそちらへ行ってしまいそうです。

クタシノクビレ

15:45 クタシノクビレまで戻って来ました。大反山への登りが長いので、ここでちょっと楽をしようと思い付き左の巻き道に入ったのですが、これははっきり言って失敗でした。武州中川駅に下るのであればこの巻き道は有効ですが、若御子山に戻るのであれば素直に大反山を登った方が良いです。

伐採地

伐採地に出ました。向こうに比べたら大分規模が小さいですが、熊倉山が正面に見え、なかなかの眺めです。

前方に見える70号・71号と続く鉄塔の巡視路らしいですが、斜面に踏み跡が続くだけの道です。右足首が痛くなってきました。黒岩尾根を思い出します。

分岐

右手に山ノ神が祀られた所は鋭角に折り返して行きます。尾根通しに古い作業道が通っている様でしたが、枯れ枝を束ねて道を塞ぐ様に置き、迷い込みを防止してました。

武州中川駅へ下る道

16:03 突き当たりは大反山から武州中川駅へ下る道との丁字路でした。若御子山へのトラバース道が有りはしないかと期待したのですが、やはり有りません。ここを大反山へ登る位でしたら初めからこっちには来ません。少々意地になって無理矢理直進し、道無き斜面をトラバースして行きました。

初めは緩斜面なので順調に進めました。しかし、やがて岩の突き出た崖の様な斜面に変わり、手足を総動員でなければ進めなくなりました。それでも何とかギリギリ通過出来そうなラインが見えるので引き返す気になれず、悪戦苦闘しながら最後まで行ってしまいました。今考えても何の装備も持たずに行くような所ではなく、無事通過できたのは運が良かっただけだと思います。

再び道に飛び出したのは檜の祠を少し過ぎた所でした。駐車場に戻ったのは17:31です。

戻る  |  矢岳2へ